- “Otaku”企画 vol.8 -
 
 
 
 

「伝統工芸士は国家資格である」

 
 
2021/02/01

 

 
 「伝統工芸」は昨今改めて注目され、百貨店の店頭や一部のギャラリーだけではなく、身近な店舗や様々なメディアでもよく出会う身近な存在となりました。かく言う私たち匠頭漆工も伝統工芸である山中漆器の一職人。二代目、かつ職人頭である弊社社長久保出章二は伝統工芸士の資格を有しております。さて、ここで質問。伝統工芸士って何でしょう?そもそも、伝統工芸とは?
今回は、知っているようで知らない日本が誇る「伝統工芸」のお話。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

伝統的工芸品産業の振興に関する法律=通称“伝産法”

 
 
 
巷に溢れている「伝統工芸」と言葉。何となくのイメージはあるけど、何なのかと聞かれたら…その土地に昔から伝わるもの?伝統的なもの?どこからが伝統?意外とふわっとした認識であることに気づきますよね。勿論そのイメージで間違いないのですが、実はこの伝統工芸、法律で公的に定められているのです。
 
 
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第一条 この法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。(昭和四十九年法律第五十七号伝統的工芸品産業の振興に関する法律より抜粋)
 
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これはこの法律を定めた『目的』。地場に根付いていていて、人々の生活から生まれ継承され、これまでも、そしてこれからも続くべきもの、これが伝統工芸の目的とされています。(ちなみに正式には「伝統的工芸品」ですね)では、伝統工芸とはそもそも何なのか。その具体的な定義は次に続く第二条に記載されています。
 
 
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第二条 経済産業大臣は、産業構造審議会の意見を聴いて、工芸品であつて次の各号に掲げる要件に該当するものを伝統的工芸品として指定するものとする。
一 主として日常生活の用に供されるものであること。
二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。(昭和四十九年法律第五十七号伝統的工芸品産業の振興に関する法律より抜粋)
 
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これが第二条『伝統工芸の指定』所謂伝統的工芸品とはこれぞあるっ!という説明文です。一の“日常生活の用”=要するに普段の生活で使用する身近なものというのが大切な部分。鑑賞して愛でる、ではなくて「用」いて生活する。これが伝統工芸のあるべき姿なんですね。
 
ちなみにそれぞれの詳しい説明は 一般法人伝統的工芸品産業振興協会で解説がありますのでご参考にどうぞ! 伝統工芸品とは▶
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 

伝統工芸士は国家資格!!!

 
 

 
 
 
 

では、伝統工芸士とはどんな存在なのでしょうか。それは、
 
“経済産業省大臣に認定された上記の「伝統的工芸品」の製造に従事する技術者で、高度な技術・技法を保持する方” です。

 
伝統工芸士は国に認められた国家資格なんですね。 ちなみに英語では"MASTER OF TRADITIONAL CRAFT"。カッコイイ響き!ですが、この認定を受けるには次の条件も。
 
 
経済産業大臣が指定する伝統的工芸品の製造実務経験が12年以上あること
受験する伝統的工芸品の地内に居住していること
  
 
現在指定されている伝統的工芸品は全国で236品目。今年の1月に入って認められたほやほやの産業は名古屋の節句櫛です。我らが山中漆器が認定されたのは昭和50年(1975年)5月10日。全国でも19番目と早い段階で認められている伝統的工芸品なんですね。
全国の一覧はこちら▶(一番最初の認定は同年2月の南部鉄器がです)
 
この伝統的工芸品、伝統工芸士という認定制度が共に始まったのは1974年と意外と最近です。これは後継者不足という各伝統工芸の衰退を活性化させるため設けられた制度なので、ただ技術を磨く、作る、だけではなく後継者を育てるという未来への継承という重要な役割も担っています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

全産地で7%

 
 

 
 
 

私たちのお付き合いのある職人さんのところに行くと工房の隅っこに何気なくどしっと置かれているこんなタテ。これこそが経済産業省(弊社社長が認定された当時は通商産業省)大臣認定資格=国家資格『伝統工芸士』の認定の証なんです。あまりにも身近なため今まであまり注力してこなかったのですが、実は2021年1月末現在で認定されている伝統工芸士は全国で約3900人。なんと全産地で7%という限られた存在だそうで、き…貴重!!!(と言えど、昨年2020年では新たに96人が認定されたようです。)
ただ、2011年の段階では約4500人ほどいらっしゃったみたいなので、確実に減少傾向にあります。勿論有資格者だけが技術保有者ではないでしょうが、今後に向けて改めて身の引き締まる思いです。
 
全国の伝統工芸士はこの「日本の伝統工芸士」というサイトでプロフィールを確認することが出来ます。各部門毎に分かれており、我らが久保出章二は「木地部門」です。伝統工芸士の認定は伝統的工芸産業の振興を中核として担っている一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会。こちらで様々な情報がご覧いただけますので是非。
 
私たち匠頭漆工は「伝統工芸」を“売る”装備として纏うやり方をしたいとは思っていません。でも、だからこそこの「伝統工芸」や「伝統工芸士」とは何かということを正しく知るべきなのかなと感じます。この土台を固め、更にワクワクすることを生み出せるように今年も尽力して参ります。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
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