「動かざること山の如し、桟積みの話。」
美しいものこそ、乾燥が命!
秘技!桟積み!
ということで、荒挽き師さんから頂いた“生”の木地は挽く前にまず乾燥!その下準備のためにこの写真のように、どんどん乾燥室の中に積み上げていきます。この積み上げ方が『桟(さん)積み』。この呼び名は椀物の木地だけではなく、木材全般の空気を通し乾燥する積み方全般に使う呼び名なのです。
こんな風にどーっと同じ向きに積み上げるのは全体を均等に乾燥させるため。積み上げが完了すると、この木地たちは乾燥の工程に入っていきます。
何が自慢かって、この積み重ね作業はただ何となくやっているのではなく、実は木から水分が抜けて縮むことを計算に入れて積んであるということ。一つ間違えば乾燥中にバランスが崩れドンガラガッシャンと全て水の泡に。壮大な高級ジェンガ!!!なのです。
木地さんに行儀よく居てもらうためには。
私たちの得意とする薄挽きや、私たちの得意なIPPONGIなどに使われる繊細で細い挽物の技術は、山中漆器特有の縦木という木材の取り方そのものにもありますが、この乾燥という工程をなくしては語れません。
ちなみに、木材の乾燥は私たちが髪を乾かすようにただ表面からゴーっと熱風をかけるだけではなく、実は『蒸気』を使います。人間でいう静脈部分、木材の奥の奥の細かい管まで水分をコントロールするためには、ただ乾かせば良いというわけではなのです。(蒸気の話はまたいつかのOtaku企画で)
毎回工場に届いた荒挽きの木地たちは、状態丁寧に確認され、幅や高さなど微調整をされながら乾燥室内に桟積みされます。そして、数日に渡り蒸気に包まれた高温のこの部屋の中で徐々に徐々に整えられていくのです。水分量は季節の移り変わりによる湿度や気温にも左右されます。そして木の種類や状態によっても変わります。何ともない積み上げのようにみえる桟積みは、実は長年の経験と知識からくる感覚が頼りの職人技なのです。
昔の方々は、木の乾燥に何か月も何年もかけて自然に乾燥させてきました。私たちは技術と知識で一週間程でこの乾燥の工程を終えることが出来ます。だからこそ、繊細な木地挽きを実現し、日常の器になるような価格設定が出来るのです!えっへん!