- “Otaku”企画 vol.12 -
「意外と古い漆器の先祖の話。」
2022/07/08
今回のOtaku企画は私たち加賀は山中地方の産業でもある「漆器」について、そのご先祖を遡っていこうと思います。何となくのイメージはあるのですが、いったい漆器っていつから使われていたのでしょう?調べてみると、意外や意外まさかあの時代から…
実は、約12600年前から存在。
漆器の歴史、遡っても食文化が発展した飛鳥・奈良時代頃かと勝手に思い込んでいたのですが、とんでもない!実は私たちが住む日本国では縄文早期前半に当たる約12600年前頃から既に漆が使われていたんです。
以前は中国にある約7000年前のものが世界最古とされていました。しかしなんと、2000年から行われた北海道函館市
垣ノ島B遺跡の発掘調査で漆を塗った赤い糸で編んだ副葬品が出土。これにより約9000年前に歴史が塗り替えられます。そして、1984年に福井県鳥浜貝塚で出土していた木片を研究していた東北大学は2011年に漆の木片であることを突き止め、更に更に歴史が更新されました。
世界最古の漆器は日本にあったんです。ちなみに函館で出土した漆は中国の漆とはDNA鑑定の結果全く別物とされ、日本国内で独自に漆文化発展したよう。なんだか誇らしい気分になりますよね。
文化の発展と共に漆器あり
最古のものは縄文時代早期前半(約11500~7000年前)ですが、「漆器」の狭義の意味=器としての存在は縄文時代中期にあたる約5500~4400年前頃に誕生します。実際に、埼玉県寿能泥炭層から漆塗りの椀が出土しているのですが、その形は底丸形の銘々器でした。これは高台のない、汁物を入れるような椀、サラダボールのようなもの。
弥生時代には、大陸から伝えられた鉄の文化と轆轤が融合し、器を作る技術としての轆轤文化が発展。現在の基礎がつくられます。奈良時代には高台こそついてないものの、轆轤技術が更に精細な技術を持っていたのがうかがえるかなり薄い椀ものも出てきます。
全ての基礎が成された平安時代
現在の世に出回っている様々なお椀、器がありますが、その殆どの基礎が造られたのが平安時代だと言わています。主食副食が分かれたこの時代には、先日紹介した羽反り(Otaku企画 vol.11参照▶)は既に登場しており、他にも様々な種類の器が誕生。位が高い者のみならず、全ての人にとって漆器が日常の近い存在だったようです。
創作を加えると少し目新しい形も作ることができますが、使いやすさ、見た目の美しさを追及すると、この平安時代に作られた基礎形にたどり着くのが分かります。
ちなみにこの時代には、今までは横木取りだったものに、縦木取りも登場!1000年も前に、私たちと同じ方法の縦木×轆轤でお椀を作っている人々がいると想いを馳せるだけでもなんだか不思議な感覚になりますね。
参考文献:
-「日本における椀の発生と室町時代までの造形展開」(宮澤清他 1989年)
-「漆の歴史、世界最古」(tokyo-blog 2015)
-「漆の考古学」(urishi-art.net 2011)
他
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