- “Otaku”企画 vol.3 -
「歴史の代弁者“年輪”の話」
2020/06/14
私たちの生活に寄り添い、馴染み、支えてきてくれた木の存在。その自然素材の特徴として際立って美しいのが『年輪』。皆さんはこの年輪についてどれぐらいご存知でしょうか。年輪=木の年齢だけでしょ?いえいえ、年輪はもっと多くのことを語ってくれるんです。今回のOtaku企画は、私たちを惹きつけて止まない年輪のお話。
”グングン”と”ギュッ”
私たち日本人が慣れ親しんだ「木」というのは美しい年輪があるのが当たり前ですよね。しかし実はこの年輪、日本の四季が大きく関係しているんです。まずはこの写真をご覧になってみてください。
commons.wikimedia.org
これは、熱帯地方で見られるヤシの木の断面。なんか……あれ?年輪がない!!!?そうなんです。実は年輪が出来るには木の成長の緩急=季節の緩急が必要なんです。というのも…
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・春~夏
太陽が良く照り、木の幹の成長が盛ん➡これが年輪と年輪の間の白っぽい部分
グングン成長するので、この部分の細胞壁は「疎」になり薄い色になります。
・夏~秋
気温も下がり、成長がゆっくりに➡ここが年輪を数えられるの黒い部分。
成長が遅いので細胞壁が「密」になりギュッと凝縮した濃い色になります。
(冬は殆ど成長が止まります!)
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この“グングン”と“ギュッ”を毎年行うことで年輪になっていくんです。上の写真のヤシに年輪がないのは、熱帯地方だと気候が一定のため幹が一気に成長してしまうので、“グングン”しかない=白い部分しかないということ。全体的に細胞壁が「疎」なので柔らかくモロモロとした性質の木になります。
日本は皆さんも良くご存じの通り、四季が美しい国。この季節の緩急が美しい年輪を作り上げるんです。そして、素材自体の細胞壁が非常に密なので硬くてしっかりとした性質になります。その分だけ加工は難しくなるんですが…
日本のハッキリとした年輪
勿論一概に“日本”と言っても、地方によって温度やこの緩急のバランスも異なりますので、それぞれの地方が作り生み出す年輪を比較してみるのも面白いと思います。ちなみに年輪が成長するのは外側。まさに年輪がモデルになっているバームクーヘンのように外側から一年一年積み重ねていくのです。
語る年輪
年輪が教えてくれるのは、木の年齢だけではありません。先ほどの“グングン”の幅が広い場合は良く成長した証拠。その年の気候や、その木が立っていた日照状況なんかも分かるんです。まさに気候の歴史を刻んだ気象データ!年輪を読み解くことで、過去の気候変動も分かるということ。100年1000年と生きてきた木はその年数分だけそこに立ち、一本一本年輪刻みながら世の中を見てきたんですね。
他にも分かるのは、木の日が当たっていた方向。年輪の中心が真ん中にないものは、成長が全方向に均一的ではなく、良く成長した方の幅が広くなるため中心がどんどん日陰側に移動していきます。
こんな感じ
お持ちの器や、切り倒された木の根っこを見つけたらその年輪を覗きその子が何歳なのか、どういう環境でどう成長してきたのか少し想いを巡らせてみてくださいね。
ちなみに木を輪切りにしてみたものは今回ご紹介してきた「年輪」。縦にスライスして見えるものを「木目」といいます。私たち匠頭漆工が所属する山中漆器では木を輪切りにして、木が立っている方向と同じように材料を取る『縦木取り』作るのが特徴。この方法のお陰で私たちは器に美しい年輪を見ることが出来るんです。またこのお話は詳しく取り上げますね。
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