「椀の下の力持ち、高台の話」
「こうだい」と聞いて皆さん何を思い浮かべますか?「広大」な海、「後代」に伝承する、「高大」な理想…いずれにしてもとてもずっしり重みのある言葉ですね。今回は、広大な自然が垣間見え、後代にも伝えられ、高大な技術力が必要となるお椀の“高台”のお話です。
高台ってどコウダイ?
お椀の底の部分、ぐるっとついた輪っかを高台(こうだい)といいます。お椀の足の部分みたいなものですね。
木製漆器に携わる人は、器を見るとき、まずひっくり返して高台を見るといいます。何故なら木地師の技術力が一番出るところだから。まず、そもそも木地挽きは緩急のある美しい『角』を作る作業が難しい。高台の内側のように細かい部分を綺麗に仕上げるには、職人自らが削り出す刃物のそのものの形状が挽き出す高台に最適なものであること、そしてその刃物を研ぎ上げ、切れ味を常に最高のものにしておく必要がある。まさに、この高台は木地師の腕の見せ所なんです。私たち匠頭漆工には職人が何人もいるのですが、長年お仕事をさせて頂いているお客さんは、この高台をパッと見ただけで「これ挽いたの兄ちゃん(三代目)やろ?」って分かってしまうのです。その事実を知った時の衝撃は未だに忘れられない…
実は高台はとっても大事なんです。
そもそも高台の役割とは何でしょう。それは持ちやすさ、保温性を高めることにあります。淵に指をかければ、炊き立てご飯が入った器も、熱いお味噌汁が入った器も、高台までは熱が伝わりにくいので、持ちあげることができます。配膳にも、食べるときにも便利です。また、高台のおかげでお椀の底が直接食卓に付かず、空洞があることで保温力が高まります。だからお茶碗や汁椀に高台が付いているんですね。
ちなみに一口に高台と言っても、沢山の種類があります。中心に均等に広がる最も一般的な輪高台、外に向かって広がっていく撥(ばち)高台。陶磁器に広げてみたら中心が兜のように尖っている兜巾(ときん)高台や巴上の渦がある巴(ともえ)高台などなど。
高台が太ければ(見た目はちょっぴりモッサリしますが)安定し、細ければスタイリッシュに。その細さや角度によって挽き上げる難易度も勿論変わります。お椀と高台の継ぎ目が鋭角になればなるほど職人泣かせの難しさなんですね。お家の器の高台がどうなっているのか是非見てみてくださいね。
使い勝手を追及したらコロっとマルっと
ところで、器を洗って食器カゴに干すと、高台にいつまでも水滴が残りませんか?これを何とかできないかと、なめらかに仕上げたのが匠久椀です。絶妙な傾斜とガラスコーティングの撥水力で、家事の手間を少し助けます。この美しいカーブは見ているだけでもうっとりしますが、手に持った時の収まり感が愛しいです。滑らかな高台なので作り手にも優しいのは秘密の話…
ちゃんと宣伝もできたので、今回はこれにて。