- “Otaku”企画 vol.7 -
 
 
 
 

「器の原点“木”が集まる市場の話」

 
 
2020/11/16

 

 
 

一つの器が生まれる背景には、多くの職人さんの経験と技が、そして何より器の源である材料が必要です。私たち匠頭漆工が生み出す器の源は勿論「木」。皆さんはこの木がどのようにして私たちの元に届くのかご存知でしょうか。今回のOtaku企画は器になるもうちょっと前の原木の話です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

市場に集合する木!木!木!

 
 
 
器の原点を探るべく私たちが訪れたのが木材市場。ここでは各地の山から山師さん(いわゆる木こりさんですね)が伐り倒し、運ばれた木たちが大集合します。ここで、普段は私たちの前の工程である荒挽き屋が(私たちとのお付き合いの深い荒挽き屋 白鷺木工さんの特集はこちら➡ 対談企画その①/ 対談企画その②)が木の選定から、仕入まで行ってくださっています。今回は特別にその仕入に同行させて頂きました。伺った木材市場は加賀市のすぐ近くにある石川と福井の県境にある 福井県木材市売協同組合が主催する市場です。
 
この日は欅(けやき)市ということで福井県又は石川県他近隣から集まった欅の原木が山積みになっていました。白鷺木工の戸田さんは「これでも少ないほうやよ」と仰っていましたが、この所狭しと並ぶ木たちの光景が圧巻!!!高いところでは数メートルにも積み上げられていて、これが一つ一つ手業で器になっていくのかと思うと、じわーっと感動に包まれました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

一本一本にアイデンティティ

 
 

 
 
 

運ばれてきた原木たちは一本一本こちらの協同組合の職員の方によって丁寧に採寸され、番号が付けられていきます。そしてセリが行われるタイミングで見やすいように並べられるのです。
それぞれの木には登録番号と、採寸されたサイズが記されています。採寸は伐採された面の元口(木の幹に近い太い方)ではなく、末口(細い方)の部分の最小径が測られます。木は自然素材なので、真ん丸ということは殆どありません。だから統一基準が決められているんですね。ちなみに14cm以上は2cm刻みで表示するようです。例えば29.8cm⇒28cmということ。切り捨てなんですね。
この写真中の一番手前の原木見てみると、チョークの部分は【長さ/直径】となっていて、48⇒末口最小直径が48cm、6⇒長さ6mということになります。

 
 
 
 
 
 
 
  
   

いざ、セリ!

 

 

 
 
 
 
 
しとしと雨が降る中、皆さん傘を携えての「セリ」スタート!セリと言えば魚市場や野菜市場のようにピリピリとした空気の中、叫び声が飛び交う緊張感たっぷりのイメージを持っていたのですが、こちらの福井木材市場さんでは皆さん長年の仲ということで、和やかムードの中行われていました。
原木のセリは入荷してきた木それぞれに番号を付け、皆さんで一つ一つ確認しながら進めていきます。「張り子」と言われるセリを仕切る方の掛け声で、目安の価格から開始し、仕入をしたい業者さん間で競っていきます。
 
-張り子さん「2から~、2、2、2、2…とりゃっ」
-業者さんA「2万5」
-張り子さん「2万5!2万5、2万5…」
-業者さんB「3万!」

-張り子さん「3万!3、3、3、3…」

      「決まり!ありがとうぅっ!」
 
という感じで独特のリズムの数字連呼と掛け声の間に、欲しい業者は手を挙げるか、欲しい価格を叫びます。これで価格が決まっていくのです。一本一本のセリはものの10~20秒ほど。 
 
欲しいものは事前に確認したりしながら、その場の駆け引きに応じて判断していくのは至難の業。作る商品の内容や予算などを頭に入れながら、瞬時に目の前の木の価値を理解し、それを仕入価格に落とし込んでいく。まさに先日の対談で戸田さんが仰っていた「瞬間的に見極める楽しさ(参照➡ 対談企画vol.1 第二回)」という荒挽き屋の醍醐味を思い出していました。それは同時に経験と知識がないと全く実現しない難しさ、これもまさに職人技なんだなぁとひしひしと実感…。“職人技”と言えば、手仕事を想像しがちですが、こんなところにも知識と経験、そして技が詰まっているんですね。今度はこちらの協同組合の方々にもお話を伺いたいな、なんて考えてるこの頃です。
 
 
 
 
 
 
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